金沢21世紀美術館
モダンアートの美術館なのでほとんど期待してませんでした。でも行ってみると期待に反しておもしろい美術館でした。なんで面白いのか?
この美術館は考える事よりも、感じることに重点を置いていること。脳味噌よりも感覚器官の方に訴える作品が多くありました。光や水の動き、音、触る、入る、覗く、時間の変化、など五感で感じることができる作品が多いからでしょう。企画がよかったのですね。子供づれの家族が多いのもここの特徴です。なかなか愉しめます。愉しめるモダンアートを、これからも模索していって欲しいものです。
美術館の運営方法は、ひとつの部屋を作家に与えてその空間あった作品を造る、予算も美術館が持つのでしょうね。作家によっては指示書だけが来て、本人は来ない。アルバイトやボランティアを使って作品を仕上げる、その過程も公開して見せる。こんな方法もあるんですね。本人が来て、学生やアルバイトを使って、造ったものもありました。こういった運営方法も日本では初めてなんじゃないでしょうか。
モダンアートの多くは頭で考える、考えさせる事自身が作品になっているものが多くて、人間の脳味噌は不思議なもので、考える事が好きなのか、考えさせればもう良いんです。それで終わり。結果、作品自体は貧弱なつまらないものが多いんです。
もうひとつモダンアートはテーマが個人的なものになり過ぎていて、見ず知らずの作家が何を考えて造ったのか初対面の人には分る訳がありません。分らないのは鑑賞する側の問題では無く、作者の能力不足もしくは解説が足りません。分らないモノは 愛情をこめて・つ・ま・ら・ん・と正直に教えてあげましょう。
館員のみなさんも良く教育されていて各作品の解説もしっかりしてくれました。モダンアートは聞かないとよく分りません。行く予定のある人は、どんどん質問してあげてください。みなさんとても親切に解説してくれます。
建物もシンプルな真っ白な壁と透明のガラスだけのしずかな器です。中庭がいい場所に配置されていて、どこも明るく開放的で、モダンアートには相応しい、いい建物です。展示室の天井は残念でしたね、見上げる作品には、蛍光灯が映って、じゃまな雑音になってしまいます。美術館の照明はむつかしいです。
以下の写真は気に入ったもの5点。でも写真では、何が面白いのかは全然映ってませんから、大体こんなもんですという程度で見てください。
「ブレイン・フォレスト」
ゲルダ・シュタイナー(1967年生・スイス)&ユルグ・レンツリンナー(1964年生・スイス)
金沢近郊で集められた海岸のゴミや電線・樹木・造花・押し花でつくられたネットワークをイメージした森 部屋全体を使って、脳のシナップスのような造型でネットワーク=森に見立てています、ソファに寝そべって見上げるとなんとも気持ちの良い空間です。
「世界の起源」
アニッシュ・カブーア(1954年生・ボンベイ生・ロンドン在住)
斜面になったコンクリートの壁に黒い楕円形。全てを吸い込むブラックホールのような楕円で「無」を表現しています。これは説明を聞かないと分りません。実は楕円は描いてあるのでは無く、コンクリートに穴が空いてます、穴の内側を黒く塗ってあります。しかし、何度見ても、知ってながら見てもそうは見えません、黒い塗料が秘密だそうです。何かを感じさせる黒い穴です。これいいです。
「スイミング・プール」
レアンドロ・エルリッヒ(1973年生・ブエノスアイレス)
中庭に造られたプールは上から見ると底から下を見上げている人が見えます。下に降りて上を見上げると水の揺らぎを通した太陽光線の煌めきと見下ろす人が揺れています。
「Vacuum Packing!」
石綿 誠(1976年生・神奈川県)
薄いゴムで造られたフィッティングルームに人が入ります、下から真空ポンプで空気を抜いて、真空パックにしてしまう機械。空気が抜かれて行くに従って、人の身体のシルエットが徐々にクッキリ見えて来ます、半透明のゴムなので、ぼんやりと形がみえます。不思議な作品。入った人が一番面白いんでしょうね。
「バイ・サークル2004」パトリック・トゥットフォコ (1974年生・イタリア・ミラノ在住)
友だち6人のキャラクターをイメージしてデザインした自転車。「ナターシャ」「シルヴィア」「アレッサンドラ」「エミコ」「リツ」「ユーコ」の6台です。オシャレなリカンベント。愉しい自転車です。私も乗ってみました、ブレーキはダイアコンペを使ってました。かなり重いのでロングツーリングには向いていません(笑)
おもしろかったので、つい、写真をとってしまいました、金沢21世紀美術館のみなさん、ごめんなさい。
knos3